部分切開法(小切開法)small incesion ptosis repai
部分切開法(小切開法)眼瞼挙筋腱膜前転法-小さな切開から眼瞼下垂の修正
●部分切開法(小切開法)の切開デザイン
まぶたの小さな切開(7-15mm程度)からアプローチし、傷んで切れかかっている眼瞼挙筋腱膜を瞼板に固定する。(参考文献1)
比較的新しい術式と言えますが近年急速に普及しています。
小切開法は、傷跡が目立たたない、術後の腫れが少ない、確実な眼瞼下垂の治療が可能な方法です。
”切らない眼瞼下垂手術”などと比較しても実際には低侵襲であり、多くの患者さんに第1選択としてお勧めできる手術です。
開発の経緯
▼”全切開法” 受けるのが大変な手術!
従来は全切開法を用いるのが世界的な主流だった。
が、しかし.....
<全切開法の欠点>
①手術のマグニチュードが大
②術後の腫れ
③まぶたの変形のリスク
低侵襲で眼瞼下垂を修正する新術式の開発が必要
(7mm切開の小切開法眼瞼下垂症手術)
▼”小切開法”(1999年、米国の形成外科医が発表)
・皮膚切開:8mm
・腱膜固定:1点固定(中央のみ)
・特徴:ダウンタイムの少なさ、低侵襲性
▼小切開法の日本での改良
<小切開法(初期型)2005年~>
・皮膚切開:7mm
・腱膜固定:1点固定(中央のみ)
(一瀬晃洋「小切開法による眼瞼挙筋腱膜前転術」第50回日本形成外科学会総会.2007年)。
特徴:
①ダウンタイム少ない
②眼瞼の中央1点固定→三角の眼になりがち
③対象が比較的軽度の眼瞼下垂の患者さん限定
<部分切開法(改良型)2007年~>
・皮膚切開:15mm
・腱膜固定:4点固定(まぶたの全部)
特徴:
①ダウンタイム少ない
②まぶたの形がきれいに整う
③効果が長期に安定
④重度の眼瞼下垂に対しても効果的
⑤必要があれば二重まぶた手術も可能
*******部分切開法眼瞼下垂手術は、患者さんにとって受けやすい手術です!*******
いちのせ形成外科皮膚科 眼瞼フェイスクリニックの眼瞼下垂手術では、99%が部分切開法です)。
小切開法術後経過-腫れ・ダウンタイム少ない
▼眼瞼下垂症 中等度 54才 女性
●中等度の眼瞼下垂 MRD(≒瞳孔中心からまぶたまでの距離):1mm
●部分切開法(小切開法)眼瞼挙筋腱膜前転術 約15mm切開
●手術直後 目の開きは良好 腫れは少ない
●術後1ヶ月 目の開きは良好 手術を受けたことが周囲の人にわからない
MRD(≒瞳孔中心からまぶたまでの距離):4mm
●術後1ヶ月 傷跡目立たない
※症例写真の使用の許可を頂き深謝申し上げます
適する症例
✔眼瞼下垂ならばまず部分切開法を推奨
眼瞼挙筋の筋力が大きく低下していなければ第1選択と考えます。
✔若干皮膚のタルミがある方にも効果的
開発当初は、まぶたのたるみがある患者さんには向かないと考えていました。しかし、実際にタルミが多い患者さんに部分切開法を施行してみるととても有効です。
術後は、多くの患者さんにおいて皮膚切除を追加する必要はないことがわかりました。
✔片眼ずつの部分切開法を強くお勧め
※手術を受けるのがとても怖い患者さん(私自身もですが...)には、特に片眼ずつの部分切開法を強くお勧めしています。
10-15分で終了しますし、術後も両側同時の手術と比較してずいぶん楽です。
参考症例
▼眼瞼下垂症(両側) 中等度~高度 58才 女性
片眼ずつの手術 →(おすすめ:腫れているまぶたを眼帯で隠せばあまり仕事を休む必要がない)
●術後1ヶ月 目の開きは良好 手術を受けたことが周囲の人にわからない
MRD(≒瞳孔中心からまぶたまでの距離):4mm
(※なるべく左右の大きさが揃うように、まぶたの筋力などの計算して手術します。)
✔最終結果
眼瞼下垂症手術(片眼づつ)
★術後6ヶ月 左右の眼の大きさがほぼ揃った。傷跡は目立たない。偏頭痛、首痛みの減少
(二重まぶたのリペアは希望しなかったため若干の乱れあり)
※症例写真の使用の許可を頂き深謝申し上げます
4点留め部分切開法の利点
✔1)手術を受けるのが楽
手術時間が短い(腱膜の4点固定で10-15分程度)
痛みが少ない
出血が少ない
✔2)術後のダウンタイムが少ない
腫れが比較的少ない
内出血が少なく、パンダの様なまぶたになることが少ない
傷跡が隠れやすい(短い傷+皮膚が適度にかぶさる
✔3)傷跡や変形が少ない
傷跡が目立ちにくい(まぶたをよく観察してもわからなることが多い)
まぶたの変形のリスク少ない(皮膚を切除しないため)
眉毛の下降が少ない(全切開法では眉毛が下がりやすい)
✔4)修正のずれが少なく長期的に安定
確実な下垂の治療が出来る(腱膜の痛んでいる部分を確認して周囲の組織と分けることが可能なため)。
眼瞼の内側~外側まで強固な修正が出来る(腱膜の4点固定により)。
術中に挙上度の調整がし易い(局所麻酔の量が少ないため眼瞼挙筋に麻酔が効いて高さの調整がしにくくならない)
(※麻酔液を多く入れると腫れが多くなるだけでなく、術後の修正のずれを生じる原因となります。)
✔5)修正手術が容易
皮膚を切除しておらず、癒着や組織不足に陥ることが少ないために、万が一修正手術が必要になっても容易
欠点と限界
■1)医師が手術に習熟する必要
術野が狭いため、眼瞼下垂症の手術解剖の十分な理解が必要
■2)皮膚切除なし
皮膚切除がどうしても必要な場合は他の術式の追加が必要
→後に眉下切開(眉毛下皮膚切除)などを行う
■3)脂肪切除の部位と量の制限
とても腫れぼったいまぶたの二重まぶた形成を行う場合に、脂肪などの減量の制限あり
→全切開法を選択して下さい
同時に付加できる手術・追加して行う手術
二重まぶた作成、脂肪の減量、脂肪移植、内眼角形成術、眉毛下皮膚切除術(眉下切開)、
外眼角固定術、眉毛固定術、眉毛上皮膚切除術、内側前額リフト、こめかみリフトなど
(※いくつかの術式は保険適応外となります )
文献(参考)
成人の眼瞼下垂症手術―部分切開法眼瞼挙筋腱膜前転術 一瀬晃洋 PEPARS 2008年
(要約)我々の眼瞼下垂症の診断方法と治療方針を解説する。特に本稿では、部分切開法眼瞼挙筋腱膜前転術を紹介する。
本術式は、眼瞼挙筋腱膜前転を7~15mmの短い皮膚切開から行い、腫脹や紫斑などが少なく早期の社会復帰を達成可能とする。
簡便、出血が少ない、手術時間が短い、痛みが少ないなどの利点も有する。局所麻酔の量が少なく、眼瞼挙筋への麻酔が影響して前転量の術中調節が難しくなることが少ない。
手術の痕跡が目立ちにくく、眼瞼の構造を大きく変化させることがなく、眉毛下降も比較的少ないために、整容的にも自然な仕上がりを得やすい。
本術式は、患者にとって容易に受けることが可能な手術であるといえる。われわれは2005年から本術式を行っているが、軽度~中等度の皮膚弛緩を持つ眼瞼下垂症患者のほとんどが
本術式単独で治療可能であり、重度の弛緩を持つ患者には、眉毛下皮膚切除術との組み合わせにより、患者満足度の高い治療が可能である。
※症例写真の手術の費用とリスク・副作用・合併症
<費用の目安>
眼瞼下垂症手術(保険適応)
いちのせ形成外科の費用を提示
<主なリスク・副作用>
傷跡、左右差、ふたえまぶたのラインの乱れ、兎眼、変形など
※いちのせ形成外科皮膚科 眼瞼フェイスクリニックの眼瞼下垂手術では、99%が部分切開法です。